目も楽しませる手作りの和菓子。

御菓子舗 田島庵

TEXT/KAGEHIRO WATANABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

札幌ドームや東豊線福住駅からほど近い西岡の住宅街。ここには、前述の施設よりもずっと古くからこの地域の人々に愛されてきた和菓子専門店、田島庵さんがあります。お店のご主人は和菓子屋さんで生まれ、70年ほど続いていたという今はなき老舗菓子店の一炉庵さんで腕を磨き、30年ほど前に独立。まさにお菓子作りひと筋の人生。そんな筋金入りの職人さんのお店というだけでも気になります。

豆大福は開店時からずっと田島庵さんの看板商品のひとつ。見た目からすでに特別で、板状のお餅が餡を巻き込むような独特な形になっています。お餅は、少し厚めだけれど、とてもやわらか。ひと口食べると、お餅と黒豆のほどよい塩気が餡のなめらかな甘さとまざり合い、優しく口中に広がります。甘いだけではなく、素材自体の風味も楽しめるように。そのように配慮されたあっさりめの仕上がりだからか、日本茶はもちろん、コーヒーや紅茶にも合うとのこと。甘い物が苦手だけれども田島庵さんの和菓子なら食べられる、というお客さんもいらっしゃるそうです。

丸くて大きな栗まんじゅう、甘さひかえめな利休まんじゅうやきんつば、見た目も楽しい干菓子などなど、田島庵さんにはたくさんの和菓子があります。季節に合わせたお菓子も作っていて、お正月には「口取り」も用意するのだとか(「口取り菓子」というのは、鯛などの縁起物に似せた形の、北海道の郷土菓子です)。どれも手間隙をかけた手作りで、味だけではなく、見た目にもこだわりあり。市外のお客さんも多いというのも納得です。札幌に住んでいる方もそうでない方も、一度行ってみてはいかがでしょうか。