札幌の歴史と共に歩んだ、本物の味。

札幌の老舗ラーメン店 3選

TEXT/ATSUSHI HOSHI, MOVIE/KOJI AZUMA

ラーメンの激戦区、札幌。1,000軒以上が激しい入れ替え競争を繰り広げ、日々新しいお店が生まれては消えていく街。そんな中、特に人気店がひしめき合う大通エリアで数十年にわたって愛され続けている老舗のお店があります。今回は老舗3店舗に、永く続ける秘訣や創業当時から代々受け継がれる想いを伺いました。

昭和22年創業
札幌ラーメン だるま軒

 札幌の観光名所、二条市場の一角に佇む『だるま軒』は今年で70周年。四代目となる現店主が店に立つようになってから、すでに30年が経つという。札幌ラーメンといえば味噌、が定着する前から出されてきた素朴な醤油ラーメン。自家製麺にこだわり「壊れたら店をたたむ」と語る特注の製麺機は創業初期から使い続け、今もまだ現役である。

 「昔と同じように作っても、使っている材料から道具まですべてが違う。基本的な作り方は変えず、店の味を守る。」そう話す店主が最も難しいと語るのは、永い歴史を支えてきた常連さん達を満足させること。「自分の作っているものに、これで良いということは無い。やっているうちは、ずっと修業。」という初代から脈々と受け継がれる教えが店の歴史を支えている。札幌ラーメンの最古参の1つとも言われる名店の味を歴史とともにご賞味あれ。


昭和41年創業
ラーメンの大公

 狸小路の4丁目と5丁目の間で、北側に目を向けると趣のある黄色い看板と暖簾が見えます。「50年間、ずっとこの場所でやっています」そう語るのは『大公』の二代目店主、田中さん。義父である先代曰く、他人に任せると店の味が変わる。無理に店を多く出すより、信頼できる人間がいつも店にいて、丁寧な仕事をすることが店の味を守る秘訣であるとのこと。

 「ラーメンの美味しさは熱さ。熱いものは、熱く出せ」。その教えを守るため、必ず麺を入れる前にスープを小鍋で沸かし返す。そんな『大公』で不動の人気を誇るのは今も昔も変わらず、味噌。先代の時代から来ている常連さんもいれば、30年・40年ぶりにくるお客様もいる。そういうお客様に「変わらない味。やっぱり美味しいわ」って言ってもらえることが一番の喜びだという。半世紀もの間、愛される変わらない味は、初めての方でも懐かしい味に感じるはず。


昭和53年創業
元祖さっぽろラーメン もぐら

 目の前にはススキノ交差点、新ラーメン横丁の一番手前に位置する『もぐら』は創業39年。当時、「もぐら横丁」と呼ばれていた地下通路の飲食店街に店を構えることになったのが店名の由来とのこと。炒めたモヤシとタマネギが入った昔ながらの味噌ラーメンと、どんぶりを覆い隠すほどの大きなチャーシューが名物です。

 「観光客も多いが、22:00を過ぎると飲んだ後の人が多い」と語るように歓楽街ススキノの入口ともいえる場所柄、様々な人間模様が垣間見えます。本当に日本かと思うくらいアジア圏やアメリカ、ヨーロッパなどからの外国人旅行客で店内が賑わう時間帯がある一方で、朝の4時、5時の閉店前でもシメの一杯として欠かさず訪れる常連も数多くいるといいます。長年多くのファンに愛される味は、店内の壁一面を埋め尽くした著名人のサインからも伺えます。この先も札幌とススキノの行く末を見守っていくであろう時代を超えた銘店の味を是非。