変わらない時間と空間。

ZAZI

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

すこし肌寒い日、恋しくなるシチュウ。街中で食べたくなったとき、いちばんにここ「ZAZI(ザジ)」を思い出す人も多いのではないでしょうか。お店のオープンは1976年。その後1981年、1条だけ南に移動して狸小路近くの現在地へ。激しく変遷してきた大通・すすきの地区で、30年以上にわたって変わらない佇まいを見せます。店内の壁に掛けられたたくさんの絵画、ポスター、写真の中には、店長である森口さんの知り合いが描いたものや、パリに住む友人が送ってきたものも。気どりのないギャラリーのようにも感じる空間です。

ほかにないものを、と考えてメニューに加えたシチュウは、ルウがホワイトとブラウンの2種類。ほうろう鍋に入った熱々の「茄子とミートチーズシチュウ」は、さらりと穏やかな口あたり。セットにすると、丸くほんわりとしたパンとドリンクがついてきます。ドリンクはコーヒーやコーラも選べますが、妙に気になってしまうのが「パワードリンク」。オレンジコンク、レモン、牛乳でつくる、すっきり爽やかな味わいです。もともと「パワーランチ」につけていたことからそう名づけたそうですが、静かで落ち着いたZAZIの雰囲気とは少しギャップのある名前が、また魅力。手づくりのクッキーやケーキ、スパゲッティ、パフェにも根強いファンがいます。訪れたときは、ちょうどクッキーが焼き上がったところでした。

もう何代目かわからないという、ほうろう鍋。淡いイエローとホワイトの鍋底がいくつも並んで、カウンターの上に吊り下げられています。つややかな焦げ茶色のテーブルや椅子は、同じ型のものを少しずつ買い足してきました。表面がこすれてしまった椅子の肘掛けに、積み重ねてきた時間を感じます。
玉ねぎを刻み、ルウの味を確かめ、ケーキを切り分ける。長い歳月に気負うことなく、おいしい料理と居心地のよい場所を提供する。立ち止まることのないZAZIの日常が、そこにありました。