絶品“アヒージョ”を、商店街のスペインバルで。

バル ハルヤ

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

いつの頃からでしょうか、都会ではスペインバルブームが巻き起こり、札幌にも“バル”スタイルのお店があちらこちらにできました。地下鉄南郷7丁目駅から徒歩5分、本郷通商店街の一画にある「バル ハルヤ」もまた、数年前にオープンしたばかり。しかし、このお店、ただブームに乗っただけではなさそうです。噂を聞きつけた客が、遠くは釧路や函館からも訪れるといいます。小ぢんまりとした雑居ビルの2Fにどんな魅力があるのでしょうか ―。

アフロスタイルに野性的な髭。店を切り盛りするマスターの野中裕美さんは、その風貌からはとても想像がつきませんが、かつては通信機器の会社に勤めていたバリバリの営業マン。「おいしいお酒と料理を、手ごろな価格で楽しめるお店をつくりたい」と、一念発起し、脱サラ。念願のバルをオープンさせました。バックパッカーとしてマドリッドやバルセロナなど、スペイン本土を一周し、お酒のことやタパスのレシピを学んだそうです。

ぐつぐつと煮だったオリーブオイル、漂うガーリックの薫り。これが多くの客を虜にしている“アヒージョ”です。本場スペインのバルを知る客からも、「現地と変わらない味」と言わしめました。大きなエビはアツアツのうちに頭から豪快に。素材の旨みがしみ込んだオイルは特製のバケットにたっぷりとつけていただきます。「特別なレシピなんてありません。余計なことをせず、シンプルに作るだけです」。やさしいトーンで飄々と話してくれました。

ハモンセラーノ、白カビのサラミ、豚肉のチョリソの盛り合わせ、ホッカイシマエビの薫製など、本格的なタパスがどれも手頃な価格で味わえます。日替わりのおすすめワインとスパークリングワインはどちらも500円。野中さんが厳選したウイスキーをはじめ、珍しい洋酒も豊富に揃っています。知る人ぞ知る隠れ家的スペインバルへ、雑居ビルの階段を上がってみては。