住宅街に隠れる江戸前ずし。

和可奈鮨

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

地下鉄南平岸駅から徒歩5分。高架橋を見上げながら住宅街を抜ける細い道の先。黄色い看板を頼りに進むと、「和可奈鮨」は路地に身を潜めるようにひっそりとありました。店主の浅田和男さんは19歳で上京して、築地や銀座、大阪などで板前として働き、45歳のときに両親の土地を譲り受けて同店を開業。奥様と2人で店を切り盛りしています。「こんなところで30年近くもやってんだ」と誇らしげに語る浅田さんに、「最初は大変だったんですよ」と奥様。当時から一戸建てやアパートなどの住宅に囲まれていて、当然、訪れる客はちらほら。それでもいつの頃からか、地元はもちろん遠方からも多くの客が訪れるようになりました。今年で創業28年、れっきとした老舗鮨店です。

数ある握りの中でも「穴子」1貫280円と「バッテラ」630円が自慢の一皿。開業当時、北海道ではまだ江戸前の「穴子」があまり浸透していませんでしたが、少ないお客さんの中には「穴子」や「バッテラ」を求めて再来店してくれる人もいました。修業時代に徹底的に叩き込まれた江戸前の技が認められて嬉しかったと言います。「もうやめたいんだけど、これ喰いたくてわざわざくる人もいるからさ」と笑って話す浅田さん。常連客はその明るい人柄にも惚れ込んでしまうのでしょう。

特製中巻520円は、“中巻“とは思えないほど大きくてボリューム満点。「巻いたときに玉子がまんなかにくるように」と、巻き方のコツまで披露してくれます。具は玉子や穴子など。華やかさはありませんが、味がしっかりとまとまっていて、こだわりが感じられる逸品です。旬のネタが楽しめる松ずし10貫は1,890円。奥様の手料理も人気で、「茶碗蒸し」や「煮付け」を肴に一杯というファンもいるそうです。お酒が大好きな店主を囲むようにカウンターに常連客が集い、お店にはいつも笑い声がたえません。おおらかで豪快な店主がもてなす繊細な江戸前鮨。住宅地の奥に、すてきなお店をみつけてしまいました。


おしながき

[握りずし]
   ■松(生10貫)1,890円
   ■竹(生9貫)1,360円
   ■梅(8貫)1,050円

[お好み]
   玉子・いか・たこ・あじ・こはだ
   〆さば・はまち・穴子
   平目・いくら・北寄貝・中とろ    あわび・うに  など   1貫 80円~

[巻きずし]
   ■ねぎとろ巻(3本)1,570円
   ■納豆巻(3本)520円
   ■かんぴょう巻(3本)520円
   ■特製太巻 840円
   ■特製中巻 520円 など

 

[丼・ちらし]
   ■鉄火丼(トロ)2,200円
   ■上生ちらし 1,360円 など

   ※価格は1/28時点のものです。
   出前も承ります。詳しくはお電話ください。