「皮はごはん、餡はおかず」

餃子 すぐるや

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

すすきの小路に面した雑居ビルの片隅に灯る「餃子」の赤い提灯が目印の、カウンター7席の小さなお店「餃子 すぐるや」。一人で切り盛りしている店主の山田さんは、もとは和菓子職人として大手の菓子メーカーに勤務していました。あるとき、仕事の関係で知り合った中国人の料理人から教わった家庭料理の餃子のおいしさに驚き、独学で餃子の研究をはじめたと言います。もともと餃子づくりと和菓子づくりは似ていて、おまんじゅうの皮をつくる要領で拵えているそうです。

注文が入ってから一つひとつ手づくりするスタイルはずっと変わりません。作り置きして冷凍することは一切せず、皮を練るところからはじめます。効率は悪いけれど、それが餃子のいちばんおいしい作り方だと言います。餃子の話になると、よく「ニンニクが利いていておいしい」という感想を聞きますが、山田さんは、ニンニクの風味に頼らなくても餃子はおいしい、自分の餃子でそれを伝えていきたい、と話してくれました。「すぐるや」の餃子は、今はやりのおおげさな肉汁はありませんが、アツアツを一口でほおばると、食感が楽しめるよう大きめに切られた具材の旨味が口じゅうに広がります。

焼餃子500円は、ニンニクを使わず、五香粉のスパイシーな香りで味をひきしめています。皮は少し厚めでもっちり、食べ応え十分。香ばしい湯気を上げる焼きたての餃子は、タレをつける前に、まずそのままで味わってほしいそうです。一皿に6つ盛られているので、酢に胡椒、柚子胡椒と醤油……など、工夫次第でいろんな味のバリエーションが楽しめます。水餃子500円はつるっとした喉ごしがたまらない一品。数種類の餃子とわずかにサイドメニューがあるだけのお店ですが、その旨さがお客さまを飽きさせません。菓子づくりの工場から離れ、カウンターに立って腕をふるう今、すべてのお客さまの反応をダイレクトに見られるのがうれしいと言います。「おいしいと思ってもらえたら、ほんとにありがたいなあ」と笑う山田さんから、餃子づくりへの深い思いが感じられました。仕事や飲み会の後にでも、アツアツの餃子をほおばりに赤い提灯を目指してみてはいかがでしょうか。