ボリューム満点、味に満足。

渤海飯店

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

白菜を刻む音。熱した油に素材がくぐる音。鍋にお玉が当たる音。厨房に心地よい音が響きます。「渤海飯店(ぼっかいはんてん)」は、今年で16年目となる中国料理の店。オーナーで料理人の林忠升(りん ちゅうしょう)さんご夫妻と、ホールを担当する山道さんの3人で切り盛りしています。林さんは16歳から料理人としての修行をはじめ、平成7年に来日してすすきのの中国料理店で腕を振るっていました。その後、独立して「渤海飯店」をオープン。中国の国家資格である特級厨師 特2級の資格を持つ、大ベテランです。素早い手さばきで、黒く艶やかな中華鍋と食材を自在に操ります。

中国料理と一口に言えど、大きく北京、上海、四川、広東に分かれており、その由来も味付けも実にさまざま。林さんはすべての料理を作ることができますが、ここでは日本人向けにアレンジ。そのメニューの数は、なんと167もあります。その167番目のメニュー「海老とブロッコリーのXO醤炒め」は、シンプルなおいしさが際立つ一品。さっと炒めた2つの具材はちょうどよい歯ごたえ。その中に、魚貝の旨みがとじ込められています。「海老あんかけ焼きそば」は、パリッとした麺に、ぷりぷりの海老と優しい塩味のあんがたまらない定番中の定番。麺は、炒麺、煮麺、揚麺の3種類から選ぶことができます。おすすめは柔らかさを残した半揚の炒麺です。

お米と野菜は北海道産を使用。食材はすべて、安くて新鮮なものを林さんが自らの目で選んで仕入れています。リーズナブルで早くてボリュームたっぷり、うまさはお墨付き。そんなお店にはもちろん、ひっきりなしにお客さんが訪れます。平日のお昼時にはサラリーマン、夕方には学生、週末は家族連れ。常連らしきお客さんも多く、ひとり席についた男性に、山道さんが「いつものでよろしいですか?」と声をかけます。注文が入ると、いとも簡単そうに熱々のひと皿が完成しますが、食材の下ごしらえ、火にかけるタイミング……そんな一つひとつに、細やかな一手間や技術が隠されているような気がしました。北海道が大好きだという林さん。これからもこの場所で、美味しい中国料理で満腹にさせてくれることでしょう。