日本の四季を、イタリアンで先取る。

ワインダイニング 左岸

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

ご主人がソムリエ、奥様がシェフ。二人でお店に立つ清水さんご夫妻は、それぞれ新潟と大阪のご出身。十数年前に仕事で札幌へ転勤したときに街の雰囲気が気に入り、以前からの夢だった飲食店を開こうと決心したそうです。店名を決めあぐねていたとき耳に入ってきたのが、小説家フランソワーズ・サガンの名前。そこに何気なく漢字をあてたそうですが、「左岸」地域といえば、フランス・ボルドー地方の中でも銘醸造所が密集するワインの中心地。結果、ワインダイニングにぴったりの店名となりました。お店づくりの根底にあるのは、初物で季節を先取りする本州の食文化を札幌にも広めたいという思い。そのため、本州の食材をふんだんに使い、野菜は関西で青果店を営む親戚から新鮮なものを仕入れています。

ずらりと並ぶ前菜のメニューリストは、旬の食材が手に入り次第、更新されます。「おまかせ前菜6点盛り合わせ」は、左岸の定番や、シェフの気分でつくる季節の前菜を集めたプレート。この日は静岡産セグロイワシのエスカベシュ、スナップエンドウとチーズ2種の包み焼きなど、どれから食べようか目移りしてしまいます。隠れた人気メニューの「鴨胸肉のロースト」には、鴨らしい野性味がもっとも感じられるというハンガリー産を使用。フライパンで蒸し焼きにした鴨に、菜の花と高糖度トマト・アメーラのソテーが添えられ、香ばしい匂いが漂います。そんなひと皿ひと皿を通して、素材のさまざまな食べ方や味わいを提案していきたいのだそうです。

厨房の脇には、天井まで伸びるワインセラー。200種類以上を網羅する分厚いワインリストがそのこだわりを物語ります。ワイン通にはたまらないラインナップですが、詳しくない人でも大丈夫。グラスワインも豊富で、好みを伝えればぴったりのものをサーブしてくれます。小さなグラスで3種類を味わえる「本日のテイスティングセット」を頼めば、利きワインの楽しみも。魚には白、肉には赤…といったセオリーは気にせず、飲みたい味を自由に楽しんでもらうのが左岸流です。2004年のオープンから10年以上が経ち、「それぞれ料理やワインには口出しをしないのがルール」と笑います。それはお互いの腕を信頼しているからに他ならないのでしょう。店内には、そんな二人が醸し出す穏やかな雰囲気が流れます。狸小路1丁目の細い仲通り。窓から洩れる光に誘われるまま、ふらりと立ち寄れるお店を見つけました。


ワインダイニング 左岸

札幌市中央区南2条西1丁目6-11 第3広和ビルイースト 2階
TEL.011-207-1033
営業時間/ランチ 11:30~15:00
     (L.O.14:00)
     ディナー 18:00~24:00
     (L.O.23:00)
定休日/日曜・祝日、定休日翌日のランチ
*3名以上の場合は事前予約が確実