常連客は「正油」、観光客は「味噌」。

一徹

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

今年、創業18年になる「一徹」は、ラーメンの味も知られるところですが、夜には家庭的な料理が楽しめる居酒屋としても人気のお店です。同店が開業する前にこの場所で営業していたラーメン店の常連だったという別所徹一さん。オヤジと慕っていた店主が亡くなった後に「もう一度あのラーメンが食べたい」と、この同じ場所でラーメン店を開くこととなりました。レシピを教わることはできませんでしたが、オヤジのこだわりと想いはしっかりと受け継がれています。

地元人が注文するのは意外にも正油ラーメン。“札幌ラーメンといえば味噌“という概念が定着する以前から、オヤジの作る豚骨正油ラーメンが人気を博していたといいます。前身のお店から数えて60年以上経った今も、当時の名残りがあるのです。正油ラーメンのイメージを覆す白濁とした、ど直球の豚骨スープ。濃厚な味わいで、口当たりはなめらか。くどさは感じません。玉子を少なめにして作られた麺は、小麦本来のうまみが楽しめます。こぶりな丼に、店主のこだわりと想いが凝縮したラーメンです。