日常とアートが出会う。

北海道立近代美術館(冬)

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

札幌のほぼ中心部に位置する北海道立近代美術館。親しみを込めて”近美(きんび)”とも呼ばれています。1977年にオープンして以来、北海道の地域性と国際性を大切にしてコレクションを充実させ、国内外の近代以後の作品を多数収蔵しています。

クールな白の外観と大きな斜め屋根が目を引く建物は、北海道大学で長く教鞭をとった都市計画家・建築家の太田實を中心に設計されました。1階のホールは天井まで吹き抜けとなっていて、大きな開口部から差し込む自然光が室内に陰影をつくり出します。モノトーンでまとめられた室内は、どこか無機質な印象。けれど少し見回せば、さまざまなパターンのタイル貼り、アースカラーの石貼りなど、隅々まで意匠が施されていることに気づきます。空間全体が、展示作品を引き立たせ、観賞の余韻をそっと盛り上げてくれているようです。

収蔵作品は、北海道ゆかりの作家のコレクションが充実していますが、国内外のガラス工芸や、パリ派の絵画の収集にも定評があります。常設展示”これくしょん・ぎゃらりい”では、趣向を凝らした企画でこれらの貴重なコレクションを味わうことができます。特別展では、テーマによって国内や海外のすぐれた作品が北海道に上陸。教科書に載っていた絵画も、縁遠く感じていた彫刻も、実際に目の前に現れると、作品と対話するような感覚にとらわれるから不思議です。よく分からないけれど惹かれてしまう、そんな直感こそ美術館の醍醐味かもしれません。

近代美術館では、ボランティアが鑑賞ガイドを行うギャラリー・ツアーや、学芸員が展示内容をレクチャーするギャラリー・トークが開催されています。個人であれば事前予約なしで参加できるものがほとんどで、一歩深く作品を知ることができると人気です。夏休みには子ども向けのオリエンテーリングや作品づくりワークショップなどのプログラムも企画され、親子で楽しむことができます。また、館内にはゆったりと快適な幼児室や授乳コーナー、バリアフリートイレなども充実。あらゆる世代の人々が気負わずアートに親しめるよう、きめ細かな配慮がなされています。

お気に入りの作品を決めてじっくりと浸るのもよし、ぽっかりと予定が空いたときに立ち寄るのもよし。都心の喧噪から少し離れて、近代美術館は、奥深いアートとの自由な関わりかたも教えてくれているようです。屋外で過ごすのがおっくうになる冬、こんな空間へ、アートの小旅行に出かけてみるのもおすすめです。