往時の面影が住む。

北海道開拓の村

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

森の中にある「村」。商店も、住宅も、学校も、病院もあります。でもそこにはもう、誰も住んでいません。「北海道開拓の村」は、50ha以上の広大な敷地に、市街地、漁村、農村、山村が点在し、開拓時代の北海道の姿を今に伝える野外博物館です。明治から昭和初期にかけて札幌や道央、道南などに建築された52棟の建物が移築復元・再現されており、歴史建築好きならずとも見応えたっぷり。普段は比較にならないほど高層のビルやマンションを見慣れているのに、ここでは建物一つひとつが雄弁で、存在感に圧倒されます。

村への入口となる「旧札幌停車場」を抜けると、レトロな街並みが広がります。その中でもひときわ目を引くのが「旧開拓使札幌本庁舎」。明治6年に建築された建物を再現したもので、真っ白な壁とグリーンの窓枠の鮮やかなコントラストと、中央にそびえる八角塔が印象的です。実物は残念ながら明治12年に焼失してしまいましたが、明治21年にはその敷地の南側に、現在も残る赤れんが庁舎(北海道庁旧本庁舎)が竣工。開拓使札幌本庁舎の八角塔は、独立と進取のシンボルとして赤れんが庁舎に引き継がれました。

札幌軟石で造られた「旧小樽新聞社」の印刷所には、棚の中にずらりと整列する活版印刷の活字。往事のせわしない活気を想像してみれば、ひっそりとした静けさがより深まるようです。理髪店、そば屋、医院、写真館などを覗いても、かつての道具や設備がそのまま残され、そこで働く人々の姿勢は今も昔も変わらない、そんな印象を受けます。

「馬車鉄道」では、開拓時代に運搬や農耕を支えた北海道和種馬ドサンコが活躍中。ドサンコに引かれて、「旧浦河支庁庁舎」から「旧ソーケシュオマベツ駅逓所」までを巡ります。浦河を出発して、ゆったりと街並みを眺めているうちに喜茂別の駅逓所に到着するというのも、この村ならではの不思議な旅。冬季は「馬そり」にかわり、ドサンコが雪の中を力強く進みます。
建物や街並みから伝わってくるのは、開拓時代の人々の知恵と努力。かつての生活様式には戻れないけれど、その気概や文化は現代に確かに通じているのだと、実感させられます。平日には、社会科見学の一環として多くの子どもたちが訪れる「北海道開拓の村」。大人が休日をじっくり過ごすのにも、ぴったりの場所です。

北海道開拓の村

札幌市厚別区厚別町小野幌50-1
TEL.011-898-2692
開村時間/
5~9月 9:00~17:00
※最終入場16:30
10~4月 9:00~16:30
※最終入場16:00
休村日/
5~9月 無休
10~4月 毎週月曜
※祝日・振替休日の場合は翌火曜
年末年始
入場料/
4~11月 一般830円
     高校・大学生610円
12~3月 一般680円
     高校・大学生550円
中学生以下・65歳以上の方は無料
www.kaitaku.or.jp