点と線模様製作所 デザイナー

岡 理恵子 さん

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

植物のかたち、風や雨のにおい、移りゆく季節への気づき。生活の中で感じた情景をすくいとることから、点と線模様製作所の模様づくりがはじまります。繊細でのびのびとした模様はたくさんの人を魅了。デザインはすべて、生まれも育ちも北海道という、岡理恵子さんによるもの。ふだんは小樽の作業場で制作に没頭しているという岡さん。企画展やデザインワークで道外へ出かける機会が増えるにつれて、北海道の光の明るさや色の鮮やかさを意識するようになりました。そんな北国特有の色彩感覚は、自然と作品にあらわれているといいます。

点と線模様製作所 デザイナー、ふわりと柔らかな空気をまとった岡理恵子さんの“つわもん”インタビューです。

リノベーションしたマンションに作家さんのショップが集まる、札幌市中央区のspace1-15。その306号室が、点と線模様製作所の直営店です。明るい店内に並ぶ、澄んだ色づかいの生地や布小物、雑貨。手先が器用で何でも手づくりしていたというおばあさんの影響を受け、大学ではインテリアデザインを専攻。カーテンやテーブルクロスなどのテキスタイルを描いていました。そんなある日、「一度貼られると長く残る壁紙を勉強すれば、模様づくりの基礎がわかるのでは」と、先生からのアドバイス。それをきっかけに、19世紀にイギリスでデザインされた壁紙を木版で再現することに。さらにオリジナルの壁紙模様の制作へと進んでいくにつれて、どんどん夢中になっていったそうです。

見た風景を自分の中で模様に置き換えていく感覚は、言葉では説明しづらいといいます。紙に落とし込むときは、画材の力を借りながら。素朴で大らかなイメージにはクレヨン。その逆で、繊細な線を重ねたいときには鉛筆を。透明感やにじみを感じる模様には水彩。シャープな線は切り絵を原版に。構想やスケッチからはじまって、ひとつの生地が完成するまでに半年から1年。ほとんどは模様を生地のパターンにおさめていくための細かな修正や工場との調整です。それでも、心が惹きつけられた最初の印象を大切に、作業を積み重ねていきます。
模様のことはつねに頭から離れません。「これからも模様をつくりつづけて、探す楽しみの幅を増やしていきたい」。そう話してくれました。

岡 理恵子(おか りえこ)
点と線模様製作所 デザイナー。北海道札幌市出身。北海道東海大学大学院 芸術工学研究科卒。在学中にウィリアム・モリスの壁紙を木版で再現し、模様の構成やつくり方を学ぶ。その方法をもとにオリジナルの「北国の壁紙模様」づくりを行う。その後、より身近な布へと素材を広げる。オリジナル手芸用品のホビーラホビーレ、雑貨ブランドの倉敷意匠計画室などのデザインも手がけている。