連れて行きたいけど、教えたくない。

札幌 秘密の“おいしいお店”

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

大切な人との会食、接待、誕生日や記念日など、おいしいお店が必要なシーンはたくさんあります。その場が盛り上がるか、楽しいか、うまくいくかはお店にかかっているといっても過言ではありません。今回の特集では、知っているだけで「この人、素敵だな。」と思わせるような魅力的でおいしい店を、選りすぐって紹介します。どれも、おいしさはお墨付き。しかし、普段あまりメディアには登場しないお店ばかりです。ぜひ一度、自分の舌で確かめて、ここぞというときの行きつけにしてください。

煙の魔法に魅せられて
おずsmoked和taste

すすきのの一画、老舗ラーメン店の脇を抜け雑居ビルの手狭なエレベーターで4Fに向かうと、食欲をそそる燻香がほんのりと漂います。燻製が自慢の和食料理店“おずsmoked和taste”。オーナーシェフの長井恒輔さんは、調理師専門学校を卒業後、ホテルの厨房や和食、洋食料理店等で腕を磨き、同店を開業させました。店名の「おず」とは、おとぎ話である“オズの魔法使い”に由来します。まさに、魔法の煙が創りだす逸品の数々に、多くの人たちが虜になっているのです。

保存が目的ではなく、美味しくあじわうために燻すという燻製料理は、素材の良さを活かすために、調合するスパイスや塩加減、チップ、温度などのすべてにこだわりがあります。アレンジや盛りつけも繊細で美しいものばかりで、一皿ひとさらに対する長井さんの愛情が垣間見えます。スモークチーズ5点盛は1,780円。強い火力で短時間燻し一晩寝かせたカマンベールなど、チーズによって製法を変えています。伊達地鶏の手羽先や長沼の自然卵など、その日のおすすめの食材が楽しめる本日の燻製3点盛は1,380円。手羽先は、一口かむと弾き返されるほどの弾力。旨味をふくんだみずみずしい肉汁がたっぷりで、食感はしっとりふっくら。硬い、しょっぱいという燻製の概念を根底からひっくり返されます。

食材は有機契約農家から直送される野菜や、自然に近い環境で育った鶏卵を使用。素材のコンディションを感じながら、レシピを組み立てます。「ただ美味しいだけでは物足りない」という長井さん。北海道の食材ははただでさえ質が良く、余計なことをせずにシンプルに調理した方が美味しいものもある。しかし、あえて新しいことにチャレンジし、一手間も二手間も加えることで、今までになかった感動や驚きを生みだすといいます。燻すという製法の都合上、どうしてもお客さまをお待たせしてしまう。ただ、その分、他では味わえない料理を楽しんでいただけると胸を張って話してくれました。“燻製”は長井さんの探究心と遊び心が生みだした、究極の調理法なのです。


和食の粋と心にふれる
割彩 にしわき

公式ホームページはコチラ:http://hi-town.com/nishiwaki

煌びやかなネオンを抜けてたどり着く。暖簾をくぐると清潔な白木のカウンターが出迎えてくれました。大将の西脇勝幸さんは、大阪生まれ。地元の調理師専門学校を卒業した後、大阪の割烹料理店で板前の修行を積み、師とあおぐ人物を追いかけ北海道に上陸。その後もすすきのを中心に和食料理店で腕を磨き、同店を開業させました。「割烹」では、どうしても敷居の高さを感じさせてしまうため、「割烹」に華やかさを意味する「彩」という漢字を組み合わせ「割彩(かっさい)」としました。本格的な和食をリーズナブルに楽しんでいただき、お客さまから拍手喝采を受けられるようなお店にしたいという想いがこめられています。

じゃがいものバター煮650円は、北海道産のメークインをバターに砂糖と醤油を加えたたねで蒸し煮。じゃがいもの上品な甘さの後に、ほのかにバターの香り。上品でどこか懐かしい味わいです。 真ダチの醤油焼き900円は、新鮮な真ダチに小麦粉をまぶし醤油でさっと味付けし、きつね色に仕上げた逸品。かりっとした食感のあとにタチの甘みがひろがります。香しい味噌の焼けるにおいが食欲をそそるサロマ牡蠣と下仁田ネギの味噌焼きは1,000円。特徴の自家製みそと新鮮な牡蠣を贅沢に焼いた逸品です。

旬の食材をいちばん美味しい調理法でお出しする。それこそが西脇さんが掲げる信念。相性の良い素材を組み合わせて創る料理はどれも至極シンプル。余計なものを削ぎ落し素材の良さを味わえるよう追求されています。特に大切にしているのは、仕込みによる味の土台づくり。きめ細やかな下ごしらえがあるからこそ、シンプルな調理でも完成度の高い一皿に仕上がるのです。全国から仕入れた食材が並ぶガラスケースには、鮮魚をはじめ、京にんじんや紅時雨だいこんなど、北海道ではあまりなじみのない食材も並び、ただ眺めるのもまたひとつの楽しみ方です。訪れた人に笑顔で帰っていただきたい。食材を前にした職人の眼差しと、お客さまに対する柔和な笑顔のギャップがなんとも心地よい。 カウンターでひとり、予算と好みを伝えて一杯 ― 。そんな大人の嗜みを味わえる一軒です。


本格イタリアンの穴場
炭焼Griglia & Bar CASBA

「こんなところにこんなお店が」なんてちょっと失礼ですが、地下鉄東西線「南郷13丁目」から徒歩1分、住宅街と商店街の狭間にある雑居ビルの1階、炭焼Griglia & Bar CASBAは、本格的なイタリアンが楽しめる隠家的トラットリア。オーナーシェフの伊賀さんが、自身なにかと縁の深いという白石区に同店を開業させました。丸石を積み重ねた印象的な門を抜け、扉を開けると大きなガラスで仕切られたオープンキッチン。一枚板の重厚なカウンター、ラグジュアリーなインテリアが日常では味わえない空間を演出しています。

料理ももちろん本格派。自慢のピッツァやパスタ、ニョッキなども粉を練り上げるところから手がけています。タリアテッレ 豚肉と豆の煮込みソースは1,000円。きしめんのような平麺に、豚肉と色とりどりの豆をとろけるまで煮込んだソースでいただく郷土料理。パスタにソースが程よくからみ、素材の味をそのまま楽しめます。子羊の香草グリル 960円は、上質な子羊の肩ロースを炭火でさっと焼き、岩塩と3種のハーブでシンプルに仕上げる。ラム独特の臭みもなく、上品な味わい。店主いわく、次ぎにくるスイーツがこれ。リコッタチーズを使ったイタリア伝統のドルチェ。クリームチーズとドライフルーツのカッサータ、400円。アイスクリームとチーズケーキの間の子のような不思議なデザート。

お酒も、国籍や種類を問わず豊富でリーズナブル。フェラーリのスパークリングはグラスでなんと700円、ボトルで4500円と破格のお値段。「おいしいと思うものしか出しませんよ。」伊賀さん自らテイスティングしてから選んでいる。高級感あふれる店内、リーズナブルで本格的な料理とお酒。「ちょっとリッチな気分になってほしい。」という、伊賀さんの思いがいたるところに施されています。

  • 秘密のお店
割彩 にしわき

札幌市中央区南5条西3丁目8 N・グランデビル 2F (旧 N.04グリーンビル)
TEL.011-511-3903
営業時間/月~木 / 17:30~23:30(L.O. 23:00) 金・土・祝前日 / 17:30~1:00 (L.O. 24:30) 定休日/日曜・祝日
hi-town.com/nishiwaki/