この味と雰囲気がくせになる。

今おいしい札幌の中華料理店3選

TEXT/REINA ABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

家庭では決して出せない味、ではないでしょうか。親しみやすい店構えながら、専門店ならではのこだわりが詰まった中華。定番の一品から他では味わえないひと皿まで、メニューにも味付けにも個性があらわれます。野菜、魚貝、お肉と、様々な食材が楽しめるのも嬉しいポイント。ご紹介する3店は、地元で愛される中国料理の名店。たとえば家族全員が揃うGWに、週末に、おなかと心を満たしに訪れてはいかがでしょう。

本場の味まで、駅から2分。
玉林酒家

「キンキラキンでしょ」と店内を指さして笑わせてくれる店長の中井さん。かと思えば、厨房の料理人に流暢な中国語で注文を伝えます。優しそうな顔をのぞかせる料理人たちは、全員が中国出身。もちろん腕の確かな人ばかりです。炒め方や味付けは全員ですり合わせしており、新しい料理人が入ると、1か月以上かけてお店の味を教え込むそうです。料理はすべて、中井さんが何度も試食して味を細かく調整したもの。日本人が苦手な香辛料は控えめに、けれど、本場の味はしっかりと残すこと。その味を守るため、年に3〜5回は中国に足を運び、食材や調味料を買い付けたり、いろいろなお店を食べ歩きして、中国料理の動向を知る努力は欠かせません。

ポイントは火加減と速さ。彩り豊かな食材が鍋と宙とをせわしなく往復します。仕上げに熱したラー油をかけて出てきたのは、どんぶり一面まっ赤な「辛湯(ラータン)」。見るからに辛そうですが、ひと口すすればやっぱり猛烈に辛い。けれどその奥から旨みが現れて、もう止まりません。四川料理の基礎となる、日本でいう味噌汁のような料理なのだそうです。ピンと張ったピーマンの食感が心地よい「チンジャオロース」、その名の通り口の中でえびが弾ける「えびのプリプリ炒め」。どの一品も、ふだん食べ慣れた中国料理とは違う美味しさです。

広い店内には、イラストも添えられた手書きのメニュー、すべて中国で買い揃えたという原色の飾り、みんな大好きパンダ、西安や上海の農民画家による絵画などがそこかしこに。そんな賑やかさもお店全体から熱い歓迎を受けているようで心地よく、食欲だって盛り上がるというもの。つねに店内の温度に気を配り、お客さんに「ご飯おかわりしてくださいね」とさり気なく声をかけるスタッフの存在も大きいようです。聞けば、お店のコンセプトは「中国の庶民のお店、再現」。肩肘張らない温かさと美味しさがある、その通りのお店でした。



ボリューム満点、味に満足。
渤海飯店

白菜を刻む音。熱した油に素材がくぐる音。鍋にお玉が当たる音。厨房に心地よい音が響きます。「渤海飯店(ぼっかいはんてん)」は、今年で16年目となる中国料理の店。オーナーで料理人の林忠升(りん ちゅうしょう)さんご夫妻と、ホールを担当する山道さんの3人で切り盛りしています。林さんは16歳から料理人としての修行をはじめ、平成7年に来日してすすきのの中国料理店で腕を振るっていました。その後、独立して「渤海飯店」をオープン。中国の国家資格である特級厨師 特2級の資格を持つ、大ベテランです。素早い手さばきで、黒く艶やかな中華鍋と食材を自在に操ります。

中国料理と一口に言えど、大きく北京、上海、四川、広東に分かれており、その由来も味付けも実にさまざま。林さんはすべての料理を作ることができますが、ここでは日本人向けにアレンジ。そのメニューの数は、なんと167もあります。その167番目のメニュー「海老とブロッコリーのXO醤炒め」は、シンプルなおいしさが際立つ一品。さっと炒めた2つの具材はちょうどよい歯ごたえ。その中に、魚貝の旨みがとじ込められています。「海老あんかけ焼きそば」は、パリッとした麺に、ぷりぷりの海老と優しい塩味のあんがたまらない定番中の定番。麺は、炒麺、煮麺、揚麺の3種類から選ぶことができます。おすすめは柔らかさを残した半揚の炒麺です。

お米と野菜は北海道産を使用。食材はすべて、安くて新鮮なものを林さんが自らの目で選んで仕入れています。リーズナブルで早くてボリュームたっぷり、うまさはお墨付き。そんなお店にはもちろん、ひっきりなしにお客さんが訪れます。平日のお昼時にはサラリーマン、夕方には学生、週末は家族連れ。常連らしきお客さんも多く、ひとり席についた男性に、山道さんが「いつものでよろしいですか?」と声をかけます。注文が入ると、いとも簡単そうに熱々のひと皿が完成しますが、食材の下ごしらえ、火にかけるタイミング……そんな一つひとつに、細やかな一手間や技術が隠されているような気がしました。北海道が大好きだという林さん。これからもこの場所で、美味しい中国料理で満腹にさせてくれることでしょう。



うまい餃子、だけじゃありません。
餃子館

期待は良い意味で裏切られます。餃子以外にも多彩な料理。誰もが親しみやすい「餃子」と「館」を合わせた覚えやすくスタンダードな名前と豊富なメニューで、地元で愛される中国料理店といった雰囲気です。店長で料理長の須藤さんは東京のご出身。すでに35年にわたるキャリアを持ちます。学校を卒業して料理人として働くためにいくつかの店の門を叩いたとき、ある中国料理店で出された棒々鶏や焼きそばがあまりに美味しく、こんなに美味しいものが毎日食べられるならと、そのまま中華の道へ。昭和元年創業というその名店で料理長まで務めたのち、縁あって札幌へ招かれました。老舗で培った技術とセンスを基本にしながら、「日々食べられる価格帯でどれだけ美味しく作るか」を信条に、厨房の指揮をとっています。

開店当初から変わらない名物「肉焼き餃子」。製麺所に餃子館専用で作ってもらっているという皮は厚め。蒸し焼きというより、多めの湯で煮るように焼き上げており、モチモチ食感の皮と具材が食べごたえ十分。その名の通りの「野菜多めの焼き餃子」もあり、女性に人気だそうです。そして、卓にやってきた「五目おこげ」は、たっぷり入ったおこげと、これまた具沢山のあんの丼ふたつ。熱々と熱々が出会えば「ジュジューッ」とたまらない音。見た目、音、香りまで美味しい逸品です。途中でお酢をかければ、味の変化も楽しめます。きつね色のおこげは、最初のうちはザクザクとした歯ごたえ、次第にあんが浸みてとろりと。おこげもお店で手作りしており、鍋にごはんを薄くはり付け、温めて乾燥させるそうです。家庭でも作れるんですよ、と教えてくれました。

餃子館が店を構えるのは、木工団地や鉄工団地など数多くの工場が建ち並ぶ発寒。そこで汗を流す働き手たちが、味・スピード・量の三拍子揃った店を信頼するのは必至。そんなわけで、平日の昼時は男性客が9割を占めます。おなかいっぱい食べて午後からも頑張ってもらえるようにと、量は自然と増えていったそうです。西区方面を回るときの楽しみにしているという営業マンも遠くから訪れるのだとか。最後にいただいた棒々鶏は、深いコクを感じる味わい。もしかして……と須藤さんに聞くと、かつて自身が心から美味しいと感じた、あの老舗の味をベースにしたもの。そんなふうに、難しい味付けではなく、シンプルな美味しさと素直に向き合う。料理にかける思いがあふれたひと皿が待っています。


餃子館

札幌市西区発寒8条14丁目5-6
TEL.011-666-2239
営業時間/火〜金曜
     ランチ 11:00~14:30
     ディナー 16:30〜21:00
     土・日曜・祝祭日
     11:00〜21:00
定休日/月曜
    祝日の場合は営業、翌火曜休み