焼鳥屋36年。一串ひと串、コツコツと。

鳥銀 支店

TEXT/YUSUKE TOKOSHIMA, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

地下鉄東豊線豊平公園駅から徒歩5分。鳥銀支店は八条中学校にほど近い交差点の一画にある、創業36年を迎える老舗焼鳥店です。夕食時ともなれば、お店はあっという間に地元の常連さんでいっぱい。週末も予約無しでは入れない人気店です。大将の浅田俊二さんは、今から40年前、札幌市厚別にある鳥銀本店で焼鳥の「いろは」を学びました。タクシーの運転手をしながら生活費を稼ぎ、1日おきの休みに焼鳥屋の修行へ行くという生活を4年間続け独立。開業時に修業先の名前を頂戴し、「支店」という肩書きを付け足しました。

浅田さんは、俗にいう堅気な職人の気難しさはありません。風貌は豪快でおおらか。ふと、魅せるカッと見開いた強い眼光や、オーダーに応える威勢の良い声。“焼き“に没頭しながらも、お客さまの声や動きから目を離さない、プロフェッショナルの立ち振る舞いが垣間見えます。「特別なことはしていないけど、鮮度には気をつけてるよ。市場で見て納得したものしか買わない」と、さらりと言い退けますが、基本を忠実に守り、日々続けることが一番難しいこと。末永く愛されているのは、時代や事情や流されずに美味しい焼鳥を焼き続けてきたからに違いありません。

焼鳥の命でもある「炭」は、火が焚きつきやすい楢材と、長持ちする練炭を程よくブレンド。微妙な火加減は、年期モノの団扇をひと振りします。手前に傾斜がついた独特な焼き処は、余計な脂を落ちやすくするため。串打ちの時も、上のネタは大きく下を小さくし、火のまわりが均等になるよう計算されているのです。

人気メニューを伺うと、少し考えてから「豚と鳥(精肉)かな」と浅田さん。新鮮な北海道産の鶏肉を使用した鳥精は一本 110円。塩気をまろやかにするために吹きかける日本酒の風味がほのかに香る実に上品で繊細な味わい。豚バラのくどさがやわらげばと大葉を巻いた、ししとう巻きは一本160円。鳥かわ 一本110円は、食感を損なわないよう、玉ねぎのかわりに水気の少ないごぼうを抜擢。何気ないひと工夫に、「ただ美味しく食べてもらいたい」という想いとこだわりが凝縮されているのです。

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