歴史あり、風情あり、狸もやっぱりあり。

狸小路商店街

TEXT/KAGEHIRO WATANABE, PHOTO/NAOKO TAKAHASHI

飲食店からお土産屋、果ては映画館に競馬の場外馬券場に専門学校。小ぢんまりとしたイメージかもしれないけれど実は何でも揃っている。それが狸小路商店街です。始まったのは明治時代。札幌に開拓使が置かれるとすぐに、現在の狸小路2、3丁目のあたりにお店が建ち始め、明治6年(1873年)頃には狸小路と呼ばれるようになっていたそうです。現在は1~7丁目までの約900mに200店ほどが軒を連ねます。個性的なお店が集まっているので、ただ眺めながら歩いているだけでもあっという間に7丁目。アーケード街だし、札幌駅とは地下街でつながっているしで、雨でも雪でも平気です。

札幌に狸はいないけれど、なぜか狸小路。5丁目には、100周年記念で建立された本陣狸大明神がおわします。通称、狸神社。なでると八つのご利益があるのだとか。正月には「初狸祭」、夏には「狸八徳例大祭」が行われていて、すっかりこの界隈の氏神様のようです。狸小路のイベントといえば、「現金つかみどり」も地元ではおなじみ。その名のとおり、お金をつかみどりするこのイベントも歴史は古く、戦後間もない1949年に始まったそうです。

大都市札幌の中心にありながら、どこか懐かしい雰囲気が漂う商店街。1902年に開店した「中川商店」、現在の「中川ライター店」はそんな狸小路の顔でした。しかし、時代とともに札幌は変わり、狸小路も変わる。地元民に親しまれていた中川ライター店は、2015年1月をもって、100年以上続いた歴史の幕を閉じるそうです。閉店はさびしいですが、少しずつ姿を変えながら商店街はこの先もずっと続いていくのでしょう。